岩手医科大学
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第35回(平成21年5月24日)

口腔インプラント治療の基礎知識からコンピューターガイドシステムまで

伊藤 創造先生
伊藤 創造 先生

講師:伊藤 創造先生
(岩手医大歯学部 歯科補綴学 第二講座嘱託講師)

講演はガイディドサージェリーの動画からスタート。

オッセオインテグレーションとは。インプラントというのは歯根膜は存在しません。
そのかわりにフィクチャーと骨がオッセオインテグレーションしていることにより咬合を支えることができる。

インプラント材料。
チタンの特徴として、
1 地球のに豊富に存在する。
2 軽くて強い
3 融点が高い
4 酸素との親和性が大きい
5 アレルギーを起こしにくい。
インプラント材料としてのチタンは?
力学的適合性
弾性係数が他の材料より骨に近似。
咬合力に十分耐えれる強度。
金合金くらいの強化を有する。

チタンは表層に形成された酸素皮膜により優れた耐食性を持つ。
チタンは反応性の高い非金属であり、瞬時に酸化して表面に数?10マイクロミクロン程度の非常に強固な二酸化チタン皮膜が生じる。この酸化膜が大変安定であり、生体内でも腐食に抵抗し安定である。

盛岡のあるインプラントのスタディグループではOsseointegration+チタンを『神様がくれた贈り物』『正常な営みを続けている骨と機能中のインプラント体表面の形態的、機能的な直後結合である』
チタンにはバイオミネラリゼーションの能力が備わっている。
チタンは体液中で、その表面に骨の無機成分と類似したリン酸カルシウムを析出させる能力がはじめから備わっている。ゆえにオッセオインテグレーションを起こす。
なぜチタン表面にはリン酸カルシウムが析出させるのか?
現在の見解では、チタン表面のマイナスイオンに最初Na+イオンがマイナスイオンとくっつく。次にNa+イオンにリン酸マイナスイオンがくっつき、さらにCa+イオンがくっつきこれによりチタン表面にリン酸カルシウムの結晶ができ、オッセオインテグレーションがおこる。

臨床の現場でどうしたら、リン酸カルシウムの析出を上昇させられるか?
オッセオインテグレーションを確実にするために、ひとつはプラズマでチタン表面にマイナスチャージを向上させる。もっと簡単な方法は、生理食塩水でインプラント体を洗浄する。これにより、初期の段階でNa+をチタン表面に誘導しリン酸カルシウムの析出を向上させる。
骨とチタンの接着
オッセオインテグレーションしているといわれている部分は50マイクロメートルの無構造のプレテオグリカンといわれている部分で、これはグリコサミノグリカンと非コラーゲン性のタンパク質といわれている。
非コラーゲン性のタンパク質とは、幼若骨芽細胞で産出されるオステオカルシン、オステオボンチンをいう。

インプラント表面はこのような細胞接着性タンパクの付着に有効であるような、表面形状あるいは表面性状に改善されることが望まれる。
各企業がインプラント体表面の処理、改質に取り組み独自のインプラント体表面で製品をつくっている。
もうひとつ、インプラント体表面はぬれ性が良く細胞の付着が良くなるような表面形状あるいは表面性状に改善されることが望まれる。
各企業のインプラント体表面について説明があった。

口腔インプラント治療の咬合採得法
印象は複数のインプラントの場合、クローズドトレーではインプラント間の位置関係にズレが生じるのでプロビジョナルレストレーションを作製するときにしか使用しない。実際印象の精度を出すためには、印象用のコーピングを一度パターンレジンで連結して、それを一旦切断し、コーピングのピンがトレーの外に出るようなオープントレーを作製し、口腔内に装着した印象用コーピングをひとつづつアバットメントに取り付け、口腔内で再度パターンレジンで連結する。これによってたとえ印象材が変形してもインプラント同士の位置関係はパターンレジンにより決定しているので変形しにくい。

咬合採得については、プロビジョナルレストレーションを用いると4点支持のような通法の咬合採得ができる。というお話でした。

次に症例の紹介がありました。
あるフルデンチヤーの患者さんにインプラントをおこなったところ、しばらくしてその患者さんのご主人が来院し『妻の料理がインプラントを入れてから変わってしまい、私には噛めないものが増えてきたので私にもインプラントをやって欲しい』と言われたそうです。夫婦で来るパターンは少なくはなく、最初は奥さんから来るというのが多いそうです。
他にバーと磁性アタッチメントを応用し咬合圧を分散させ、変形の影響を受けないオーバーデンチャータイプの補綴物の症例の説明がありました。

CAD/CAMを使った上部構造制作製作の症例をスライドを用いて説明していただきました。チタン削りだしフレームのハイブリッドセラミクスの症例でした。

3D埋入シミュレーションとガイドシステムによるインプラント治療
これからの口腔インプラント治療の改善が望まれる点。
1手術侵襲(疼痛、腫脹)
2術後の治癒期間
3費用

これらに対する対応として、
1手術侵襲
 MIの考え方に基づく手術。
 疼痛が少ない、腫脹がほとんど無い。
2術後の治癒期間
 即時荷重
 早期のプロビジョナルレストレーション
3費用
 通院回数の減少による患者さんの負担減少。
そのために
オーダーメイド歯科治療として患者さん個別のサージカルテンプレートの作成
低侵襲の一回法ガイディッド埋入手術
即時咬合付加(早期の咬合回復)
歯科的QOLの向上
定期的なメインテナンス

3D埋入シミュレーションとガイドシステムによるインプラントが条件が合えばこれらを可能にしていけると思います。
コンピューターベース法による診療手順
1検査、診断、治療計画
2ラジオグラフィックガイドの準備(デンチャーのような物にガッタパーチャーで記しをつける)
3CTスキャン《ダブルスキャン法》(ラジオグラフィックガイドを入れてとラジオグラフィックガイドのみと2回撮影する)
4シミュレーション、発注(シミュレーションをして、インターネットでオーダーすると10日後にCAMによる精密なサージカルテンプレートと対応するドリルシステムが届く)
5埋入手術。上部構造装着ノーベルガイドドリリングプロトコールブローネマルクシステム
(ガイディッドサージカルテンプレート装着、ガイディッドサージェリー、状態が良ければ即日にプロビジョナルレストレーション装着)
そして、ノーベルガイドドリリングプロトコールブローネマルクシステムを用いて実際の症例のシミュレーションと埋入の手術、プロビジョナルレストレーション装着までの動画による説明。

岩手医科大学のインプラント治療の検査では唾液検査を行ってます。
実際のインプラントのメインテナンスは、専門の衛生士が行っている。
インターテンタルブラシについては、チタンフレームのような場合、チタンを傷つけないように芯が金属製ではなくプラスチックでコーティングされているものを用いている。
メインテナンスの時期としては、上部構造装着後は一年間は月に一度のペースで。一年後にレントゲン、口腔内の状態を見てその状態により、2ヵ月とか3ヵ月あけたりもしている。
メインテナンスについては術前にメインテナンスの無いインプラントは有り得ないと言うことを説明し、メインテナンスに来院する事を約束している。
チタン製インプラントは基本的に免疫機構を持たない。歯肉の付着の部分は生物学的に封鎖ができない。炎症が進むと歯肉炎が治癒しづらい。現時点で出来ることは、ホームケアとメインテナンスしか無い

伊藤 創造先生
口腔インプラント治療の基礎知識からコンピューターガイドシステムまで

(学術研修部会 21期 古町瑞郎)