あらためて口腔外科手術を考える
講師:杉山 芳樹先生
(口腔外科学第二講座教授)
口腔外科手術はここ20年で著しく変化しました。再建技術の進歩で、悪性腫瘍の切除範囲を拡大することができ予後が向上しました。また、化骨延長法は、骨移植の代用だけでなく顎変形症の骨片移動や歯槽骨の垂直的延長にも応用されています。さらに薬剤や医療器具、材料の進歩は手術手技の考え方そのものを変化させました。その変化は major surgery だけでなく、外来で行われるminor surgeryについても見られます。
Atraumatic surgery の導入は術中の軟組織損傷を少なくすることで、 治癒の促進や創部の審美性を向上させました。
医療を取り巻く社会環境も著しく変化しています。高齢化に伴い治癒不全を起こしやすい有病者への口腔外科手術の頻度が高くなりました。また患者や社会の医療への感心も高くなり、治療の際の医療事故防止への配慮が強く求められています。
このような時代に第一線の歯科医師として生き残るために、今回の研修会ではまず、Atraumatic surgeryの定義についての説明から始まり、実際の基本手技として切開、剥離、縫合、止血のコツ。外来小手術のポイントとして単純抜歯、下顎水平埋伏歯難抜歯、歯根尖(端)切除術のコツ。術中術後の合併症の対応策、応急処置について細かく説明していただき、最後にリスクコントロールのためのエラーと事故の関係についてお話をいただきました。
とてもわかりやすい説明とスライドで非常に勉強になりました。途中途中に入ったベトナムのお話も非常に興味津々なお話でした。
「こうすれば良くなる、あなたの総義歯」–総義歯の感性を磨く–
講師:鈴木 哲也先生
(歯科補綴学第一講座教授)
歯科医学の進歩や口腔衛生教育の推進により、総義歯治療の必要性は減じるものと思われていました。しかし、実際には高齢化社会への急激な移行は、総義歯治療を必要とする患者さんの減少よりも増加を招いているようです。
確かに以前のような簡単な症例は少なくなりましたが、抜歯時期の判断が大きく変わったこともあり、顎堤吸収の著しい症例やフラビーガム症例などの難症例が最近ますます多くなって来ているそうです。
今回の研修会では特別な道具や特殊な術式を用いる手法ではなく、だれでも明日から使えるという前提での内容でした。義歯装着の場面から、装着後に訴えられる痛い、落ちる、がたがたするなどの様々な不満に対し、一問一答の簡潔な対処法、そして覚えやすいように標語でまとめ、実際の症例の写真を用いた間違え探し形式やフラビーガム症例に対してイメージトレーニングというユニークな内容の研修内容でした。
(学術研修部会 22期 白倉義之)